夢の中のあかちゃん

 

たこちん(息子)は生まれてすぐブツブツがではじめて「あかちゃんのようなツルツルの肌を見ることもなく気がついたら乳児期が終わっていた。
たこちんと
ブツブツにあうまでは、あかちゃんはみんな雑誌に出てくるような、ツルツルでピカピカでいいニオイのするものだ、と漠然と思っていたたここ(私)には、正直ショッキングな事実だった。

【ショックだった】
その感情がいいとか悪いとかいうのは別にして・・

「大きくなったら花嫁さんになるの」といったような
普通の「女の子の夢」とでもいうのだろうか
自分の『まだ見ぬあかちゃん』への
一種の憧れにも似たような想いが小さいころからあった。

深い意味などない素直な気持ちで抱いていた夢のような想いだ。

おすわりが上手になってきたマシュマロのような赤ちゃん。
真っ白なレース飾りのついたドレスを着たその子を
乳母車から抱き上げる『ちょっぴり幸せ太りをした自分』の姿。
おやつの【たまごボーロ】の一粒が
あかちゃんのちぃちゃなお口にはいっぱいでもごもごする姿。
そのようすが愛らしくて夫婦二人で笑ってしまったり、、、

それがどこにでもありふれた普通の家庭の幸せだと思い、、、
そんな光景を何を疑う事も無く想像し、夢見ていた。

そんな夢とはうらはらの現実がショックだった。

 

たこちんにはアレルギーもある。食べ物、動植物、ホコリ、化学的なもの、、あげればキリがない?かもしれない。(かなり減ってはきたけれどね)夢のおやつのたまごボーロもたこちんにとってはアレルゲンだった。アレルゲンを遠ざける為の生活は手間も時間もお金もたくさんかかった。たここの描いていた【想像の普通の家庭の幸せ】と実際の生活(たこちんの乳児期の生活)とはあまりにもかけ離れているように感じた。

 

「なんで?」「どうして?」「こんなはずでは、、、」

「なんで私だけこんなめに?」

目の前の自分の現実が納得できなかった。

『わたしってかわいそう・・・。』

夜中にこどもを抱きしめ
ただ呆然とフトンのうえに座っていることもあった。

そんな気持ちの一方で
やつれた心身の様子を見聞きし、心配し、
掛けてくださるいろんな方々の言葉に

「普通の生活をしているアンタに何がわかるっ!

かわいそうに大変ね、なんて哀れみかけないで!」

(↑言えなかったけど) と、歯軋りしたり

「普通の人はなんて理解がなく無神経なのだろう」

などとも思ったりもした。

矛盾する心。

 

暑い寝苦しい夜だったような気もする。『おかしぃ、夢見てきたことと違う』全身をにじりながら大きな声で泣いている息子の顔に、そっと枕をのせた。
2時間もののサスペンスドラマの主人公にでもなった気分。
『・・・・。』
枕のうえに置いた両手をはずして考える。
『きっとテレビの見過ぎだな、あたしゃ悲劇のヒロインか?』

自分の想像していたあかちゃんとは違っても「万が一には命にかえても」と想える愛しい我が子。
精一杯大切に想っても、、、想うほどに現実の息子に対して何か申し訳なく、勝手に夢見て想像を膨らませ続け、今の現実を認める事が出来ない自分に罪悪感を感じる。
抱いてきた夢を否定し、そんな夢を抱いてきた自分自身を否定し、心が暗闇に落ちていくようだった。

 

いつの頃からか自分の抱いてた夢は、【子供の頃の夢】として心の中で思っていてもいいんじゃないのかな、と思えるようになってきた。
夢は夢、現実は現実なのだ。

ぶつぶつが出ていてもかわいい大切な息子、その気持ちに嘘はない。と同時に
少女の頃抱いていた夢を否定する必要はなく、また夢見た自分を否定する事もない。
そうすることは誰かに非難される事でもないはず。
それぞれを大切にしてもきっといいはず。

たぶん、そう、今は、そう思う。

(H13.6加筆修正)

 

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